第111章

二階の廊下。柚木結華は、扉の前に立つ人影を見つけて足を止めると、九条獅堂に短くメッセージを送った。

「先に行って。私は残って、会社の状況を把握しておく」

送信してすぐ、彼女は佐々木さんの後ろについて事務室へ入った。

事務室というより、物置に近い。

書類は雑然と積まれ、机の上には薄く埃がかぶっている。長いあいだ掃除もされていないのが一目で分かった。

佐々木さんは「好きに見ていいよ」とだけ言い残し、さっさと出ていった。

柚木結華は何冊か資料をめくった。ページが抜けていたり、肝心な説明が曖昧だったり。

――全部ゴミか。

そう思いかけたところで、ようやく現在進行中の共同案件の資料を見...

ログインして続きを読む