第117章

柚木結華は九条陽向を相手にする気にもなれず、眉をひそめたまま、彼が気を抜いた隙にすっと手を引っ込めた。

さっき軟膏を塗りながら一通り見た。九条陽向には他に目立った外傷はない。顔の擦り傷も大したことはなさそうだ。――なら、これ以上わざわざ手当てを続ける必要もない。

結華は無表情のまま救急箱を手早く片づけ、元の場所へ戻すと、そのまま警察へ通報した。

通報を終えてから、結華は九条陽向を見やり、感情の起伏のない声で言う。

「……まだ帰らないの?」

「今は帰れない」

九条陽向は当然だと言わんばかりに答えた。

「ここは危ない。最近、お前ここで寝泊まりしてるんだろ。俺は安心できない」

あの...

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