第144章

道中、柚木結華には誰かに吐き出す気力がなかった。九条獅堂もまた口を開かず、ただ静かにハンドルを握っている。

別荘に戻ると、九条獅堂は「外は冷える」と言い、彼女に尋ねた。自分で入るのか、それとも彼が風呂を手伝うのか、と。

柚木結華は迷うことなく清潔な着替えを抱え、ひとりで浴室へ入った。

さっぱりして出てくると、九条獅堂の姿はない。書斎で仕事でもしているのだろうか。柚木結華はベッドの端に腰を下ろし、さっきマンションの敷地内で起きた一幕を思い返していた。

そのとき、スマホが前触れもなくぴかりと光った。通知は二件。

一件は見覚えのある金額の入金。もう一件は差出人の表示がない。けれど、誰から...

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