第165章

柚木安東は、激化する社内の権力争いに苛立ちと焦燥感を募らせていた。自分が優位に立てていないどころか、なにより兄の勢いが自分を凌駕し始めている。

ここ数日まともに眠ることもできず、神経はすり減る一方だった。

そんなとき、林田清美の顔を見て、ふと妙案が浮かぶ。

星名を買収した裏の社長は、以前こう伝言を寄越していた。林田清美と九条陽向の結婚式を挙げるときは知らせろ、当日は会場へ顔を出す――と。

ただの「参列」なわけがない。

だがもし、星名の背後に九条家の後ろ盾がつくのなら、話はまるで変わる。

「清美。陽向と婚約して、もう二か月近いだろう? 式はいつにする。二人で話は進んでるのか」

林田...

ログインして続きを読む