第176章

柚木結華は、どうしても水に入ろうとしなかった。

背後にいた人間が、ぐいっと強く押す。足元がふらついた瞬間、結華の身体はそのまま真っすぐ――水の牢へと落ちていった。

泳げない。だが水の牢は深くない。ごぼりと一口むせただけで、なんとか立ち上がれた。全身びしょ濡れで、みっともないほど惨めな姿だった。

その様子を見た九条陽向は、脚が震えて力が抜けた。

「結華……必ず、助け出す。俺が何とかする!」

そう言い捨てると、陽向は岩崎優奈のもとへ歩み寄り、彼女の前に膝をついて頭を下げた。

「放してくれ!」

その瞬間だった。

外から扉が叩き破られ、車が一台、部屋の中へ突っ込んできた。壁をぶち抜い...

ログインして続きを読む