第18章

車がゆっくりと走り出す。

柚木結華はボディの揺れで、ようやく状況を理解した。――自分はいま、九条陽向の車に乗っている。

まだしばらくは「恋人同士」を演じなければならない。胸の奥で湧き上がる拒絶を無理やり押し殺し、結華は窓の外へ視線を向けた。流れる景色で気を紛らわせるために。

車内には、音量を絞ったインストゥルメンタルが流れている。

九条陽向は彼女が異様に静かなことに気づき、九条獅堂のせいで落ち込んでいるのだと思ったらしい。

――あの九条獅堂を前にしたら、普通の人間なら気圧される。そういう男だ。

「結華。海通りに新しい店ができたんだ。君の好きな、あっさり系の味。迎えに行く前に席も押...

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