第23章

柚木結華は、父から愛情を注がれた記憶がほとんどない。会社の中枢に入れてもらえず、「まずは現場で鍛えろ」という建前で下っ端から回され、宝飾鑑定の仕事にも関われない。自分に宿るという特別な力が具体的に何なのかも、知らされていなかった。

――だからといって、何も知らないわけじゃない。

母は結華を手のひらの上で大切に育て、話せることはすべて話してくれた。

最低限の、目で見て品を見分ける力くらいはある。

盤上の駒は一見ただの石に見えた。だが結華がそれを握った瞬間、掌の奥がじんわり温かく、くすぐったいように痺れた。続けて――その石の真贋、種類、質のランク、そしてだいたいの相場が、まるで画面のポッ...

ログインして続きを読む