第49章

九条陽向の怒りと悔しさは、顔にありありと出ていた。

林田清美はその表情を見て、だいたい腹の内を察する。惚れた女の前で恥をかきたい男なんていない。ましてさっき柚木結華は彼を一切相手にせず、彼らがいる一般の個室へ来ようともしなかったのだ。

自分の読みが当たっていると確信するように、林田清美は艶のある瞳をそっと動かし、柔らかく言葉を紡いだ。

「お姉ちゃんがパパと喧嘩したとき、こう言ってたの。貯金がない、もしパパが本当に面倒を見ないなら、これから先ずっと面倒を見られなくなる、って」

林田清美はゆっくり話しながら、九条陽向の表情の揺れを丁寧に拾う。

今の柚木結華と九条陽向がまだ別れていないの...

ログインして続きを読む