第57章

九条獅堂はスマホの着信音に邪魔され、苛立たしげに手を払った。スマホはソファの隙間へすとんと落ちる。彼はそのまま柚木結華の首筋へ顔を埋め、また噛みつくように貪った。

ぶるぶる、と――着信の震動が途切れない。

情に溺れかけた熱が引き、結華の頭は半分以上、冷たく冴えた。

さっき、危うくまた九条獅堂と一線を越えるところだった。

「……先に電話、出る」

結華は力いっぱい彼を押しのけ、ソファに腰を下ろす。ソファの隙間に指を突っ込み、苦労してスマホを引っ張り出すと、そのまま通話ボタンを滑らせた。

「結華!」

受話口から飛び込んできたのは、焦りと妙な高揚の混じった男の声。

九条陽向。

結華...

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