第60章

足を止めた彼女を見て、老人は目をきらりとさせた。

「お嬢ちゃん。年寄りと立ち話をさせるつもりかい?」

柚木結華は眉を上げる。

だいぶ歩き回って、こちらもちょうど疲れていた。どこかに腰を落ち着けて、この老人が何を語るのか聞いてみるのも悪くない。暇つぶしにはなる。

そう思った矢先、前方に、ごくありふれた路地裏の茶館が目に入った。外に簡素な席が並んでいる。

「こちらへどうぞ」

柚木結華はすっと足を向けた。

菊池はその茶館を見た瞬間、あからさまに顔をしかめた。何か言いかけたが、老人がひらりと手を振って制し、口を挟むなと示す。本人はむしろ面白がっているようで、柚木結華のあとを機嫌よく追い...

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