第67章

車は繁華街を滑るように走っていた。窓の外に流れる見慣れた景色を眺めていた柚木結華が、ふいに口を開く。

「停めて」

このまま二つ先の交差点を越えれば、もうノディ一号は目と鼻の先だ。――そこへは行けない。九条獅堂とも、これ以上ぐずぐずと縺れたくない。

「……何だ?」

九条獅堂の艶のある声が、わずかに低く沈む。

「ここで降ります。家、近いので」

柚木結華は淡々と答えた。

九条獅堂の細長い目が、すっと細まる。車内の温度が目に見えない速度で下がっていき、しばらくしてから、感情の起伏を感じさせない声が落ちた。

「理由は?」

「理由なんてありません。帰りたいだけです」

眉を伏せた横顔。...

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