第72章

「柚木結華……お前の中で俺は、卑怯な小物か?」

九条陽向が、ほとんど悲鳴みたいな声で詰め寄ってくる。

「九条家が、お前のその程度の金に困ってるとでも思ってんのかよ!」

「この三年、お前の心に俺がいたのは分かってる。なのに何だよ、急に切り捨てて……それで俺たちの気持ちに顔向けできるのか?」

理屈にもならない言いがかりに、柚木結華は目を閉じた。

「その質問、私がしたい」

「九条陽向、私――」

通話を切ろうとして、指先が止まった。

「お爺さんが倒れた!」

受話口の向こうで、九条陽向が言葉を吐き出す。

「こんな時に離れるのかよ。お前、平気なのか?」

柚木結華はスマホを握る手に、...

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