第76章

柚木結華は、誰かが自分の悪口を流している現場を直接耳にしたわけではない。けれど、なぜそんな噂が立つのか――だいたい察しはついていた。

従姉から、祖父が遺言を残した際の財産分配について聞かされている。祖父の持つ株を、彼女と従姉が受け取る。ほかの人間からすれば、それは「不公平」以外の何ものでもない。

正直、祖父が自分に株を分けてくれるとは思っていなかった。

まさか、そこまで自分のことを気にかけてくれていたなんて。

柚木家に戻って暮らし始めてから、柚木安高とは何度か顔を合わせた。そのたびに彼は妙に丁寧で、仕事はどうだ、疲れていないかと、やたら気にしてくる。

そしてある日。

柚木結華が帰...

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