第80章

柚木結華の頭はまだぼんやりと重く、全身から力が抜けていた。けれど必死に冷静さと理性をつなぎ止め、状況を整理し続ける。

聞こえてくる声の距離感からして、あいつらはまだ少し離れている。

――そのはずだった。

ふいに、肌の上を何かが撫でたような違和感。

来た。

拉致した連中かもしれない。

柚木結華の身体がびくりと硬直し、背中に薄い汗がにじむ。息を殺し、周囲の気配の変化に神経を尖らせた。

……数秒。

背後の異物感は、いったん消えたように思えた。

周囲も、何も変わらない。

遠くでは相変わらず、誰かが楽しげに談笑している。

――気のせいだったのか。

そう思いかけた瞬間、また、あの...

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