第9章

エレベーターの中で、柚木結華は虚ろな目をしたまま、機械みたいに突っ立っていた。何を考えているのか、自分でも分からない。

隣には深紫の影。広い肩に細い腰、堂々とした佇まい。近づくことさえ許さないような圧が、全身から滲んでいる。

九条獅堂は結華の手を握ったまま、離す気配がなかった。

エレベーターを降りると、庫里南の横で足を止める。獅堂はドアを開け、ドア枠に手を添えて、彼女の頭が当たらないよう守りながら乗せた。

車内は冷えるほど空調が効いていて、どこかで大提琴の旋律がゆるく漂っている。奇妙な鎮静作用でもあるみたいに、結華の思考が少しずつ輪郭を取り戻していった。

隣にいるのは九条獅堂。H市...

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