第122章 思い恐れる

来栖琴音がどれほど眠っていたのか、自分でもわからない。ゆっくりと瞼を持ち上げた瞬間、目の前いっぱいに整った男の顔が迫っていた。

琴音は反射的に起き上がり――その拍子に傷口が引きつれて、喉の奥から「……っ」と苦い声が漏れる。

「何を慌ててる。ゆっくりしろ」

浅野琉生が眉をひそめる。低い声はどこか掠れていて、妙に耳に残った。

琴音は気まずそうにへらっと笑い、それからようやく気づく。自分たちはまだ車の中にいた。

窓の外を覗くと、もともと重たかった空がさらに沈み、今にも夜に飲み込まれそうだ。

「今、何時……? あ、あなた……なんで起こしてくれないの。病院に娘を迎えに行かなきゃいけないのに...

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