第125章 何もなかったことにしよう

来栖琴音は少し首をかしげた。

「野村さんがいないのに……この料理、誰が用意したんですか?」

こんな人里離れた屋敷で、出前なんて頼めるとも思えない。

それに、テーブルに並ぶ料理は、どう見てもデリバリーのそれじゃなかった。

浅野琉生は彼女の皿に手ずから取り分けながら、淡々と答える。

「敷地内に専属のキッチンがある。滞在客にはルームサービスも出せる」

「……ここ、他にもお客さんがいるんですか?」

「いる。ここは基本的に俺が使ってる棟で、別の棟には御冠グループの社員が住んでる。空いてる棟は取引先の接待用だ」

なるほど、と琴音は腹落ちした。

あれほど広い屋敷に、浅野琉生が一人で住むは...

ログインして続きを読む