第135章 君だけだ

来栖琴音の胸が、制御できないほどきゅっと痛んだ。

アルコールは脳を鈍らせても、鼓動までは止められない。

「どうして黙ってる? 何考えてるんだ」

浅野琉生が問いかける。

「別に何も。言うこともない」

琴音は冷たく返した。

酒は彼女を大胆にする。けれど同時に、妙に冴えさせもする。

ここまで絡み合ってしまった以上、現実はもう見えていた。自分の立ち位置は、目の前の男と釣り合わない。

「聞きたいことがあるなら聞け。俺の前で隠す必要はない」

やけに思いやりのある口調。

それが余計に刺さって、琴音は呆れたように言った。

「どうして私が、あなたに聞きたいことがあるって思うの?」

この...

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