第152章 夢のように

来栖琴音は、どこか見覚えのあるその背中を凝視した。なのに、次の瞬間にはひどく遠い存在に思えて、胸の奥がすうっと冷えていく。

駆け寄りたい。問い詰めたい。

けれど体が、床に釘で打ちつけられたみたいに動かなかった。

浅野琉生。

間違いない、浅野琉生だ。浅野家の若様で、御冠グループを握る男。

来栖琴音は夢の中に落ちたみたいだった。広いホールが、彼女と壇上のその人だけの世界に変わる。

冷えた表情。よく通る声。

今まさに、彼女に口づけたことのあるその唇で、何かを語っている。

――なのに、ひとつも耳に入ってこない。

魂を抜かれたみたいに、ただ見つめることしかできなかった。

スポットラ...

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