第171章 彼女の誕生日

来栖琴音は一瞬ぎくりとして、どこか後ろめたさを隠しきれないまま尋ねた。

「……ダメ、なの?」

「当然ダメ」

伊藤心優は即座に突っぱね、正論をぶつけるように言い聞かせる。

「前に拓越テクノロジーと千明の件を調べたのは、事情があったから。あれはあなたと切っても切れない話だった。でも邦朗グループは別。あなたとは無関係でしょ。もし私が向こうの顧客資料なんか手に入れたら、それは企業の機密を盗むのと同じ。完全にアウト」

琴音だって、やってはいけないことくらい分かっている。

それでも胸の奥の不安が消えなくて、つい危ない橋を渡ろうとしただけだ。

彼女は言い訳するように、理由を丁寧に並べた。

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