第193章 戸籍

退勤して家に戻ると、来栖のお母さんがいきなり「Y市に一度戻ろうと思うの」と言い出した。

来栖琴音が詳しく聞くと、どうやら両親は向こうの家を売りに出すつもりらしい。

当時、川島治が突然ふたりをこちらへ呼び寄せたせいで、Y市のほうは何ひとつ片づけられないまま置いてきた。気づけばもう数か月。そろそろ一度、様子を見に帰らないといけない。

琴音が大学に入ったころ、両親はY市へ移り住んだ。十数年も暮らした土地だ。築いてきた生活も、付き合いも、財産もある。それを――娘のために、手放すという。

胸の奥が、きゅっと痛んだ。

しかも来栖のお母さんは、琴音のことが心配でたまらないらしく、「お父さんだけ行...

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