第209章 彼の言うことだけを信じる

来栖琴音は気まずそうに笑って、できるだけ穏やかな声を作った。

「お医者さんが、擦り傷だって。大丈夫だよ」

それを聞いても、相手は同調しない。むしろため息まじりに言った。

「こんなにひどいことになってるなんて……思わなかった」

来栖琴音は淹れたお茶をローテーブルへ運び、向かいに腰を下ろしてしばらく話した。二人とも、雪村琴奈の名前だけは口にしない。

森本千香が琴音の顔に疲れの色を見つけたところで、ようやく立ち上がって帰ることにした。けれど玄関先で、名残惜しそうに言う。

「本当は一緒に買い物行きたかったんだ。三日後、琉生さんの誕生日でしょ? プレゼント選びたくて。でも、その顔じゃ外に出...

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