第213章 心が痛む

来栖琴音は、後悔した。両手でハンドルをぎゅっと握りしめ、胸の奥に込み上げる苦しさと悔しさを、無理やり押し殺す。

――もう行った、よね。

そう思った矢先、運転席のドアが乱暴に開いた。

浅野琉生が腕を伸ばし、琴音をぐいっと引きずり出す。そのまま反対側へ回り込み、助手席へ押し込んだ。

琉生が運転席に座り直し、こちらへ身を乗り出してくるのが見えて、琴音は反射的に目を閉じ、顔をそむけた。

「……ふっ」

鼻で笑う気配。

次の瞬間、肩口を引かれてシートベルトがカチリと留まる。

「バカ女。何考えてんだよ」

琴音の頬が一気に熱くなる。目を開けて睨みつけたが、琉生はもう前を向いていて、何事もなか...

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