第215章 娘が奪われた

来栖琴音は数秒ほど聞き分けて、ようやく相手が川島治の母親だと気づいた。

切ろうとした、その瞬間。

受話器の向こうから、胸をえぐるような泣き声が飛び込んでくる。

「琴音……お願い……お願いだから、治を助けて……!」

川島治。

浅野琉生に叩きのめされて以来、ぱったりと姿を消していた男だ。琴音も、もうそんな人間がいたことすら忘れかけていた。

――あいつが、今さら何。

過去にされたことを思い出し、琴音は氷みたいな声で返す。

「悪いけど、具合が悪いなら病院へ行かせて。私に言われても困る」

「違うの、違うのよ!」母親は切羽詰まった声で食い下がった。「琴音、今、助けられるのはあなただけ…...

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