第39章 予想外

来栖琴音は、ぐらりと天地がひっくり返るような眩暈に襲われた。目の前を、車がびゅっと音を立てて駆け抜けていく。

その直後、不意に知らない男の匂いが彼女を包み込んだ。

車が行き過ぎると、彼女を助けた男はそっと腕を離し、そのまま大股で車道の中央へ向かった。落ちたスーツケースを拾い上げると、琴音の前まで運んで戻してくれる。

周囲から、ほっとしたような称賛の声が上がった。

来栖琴音が目を開けると、目の前には背の高い男が立っていた。

その顔を見た瞬間、彼女は息をのむ。

――浅野琉生。

一度だけ顔を合わせたことのある相手だった。

こんな至近距離で見ると、午前中の入札会場で目にしたときより、...

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