第61章 雨の中で仕入先を探しに行く

起業したばかりの頃、来栖琴音はこの街に強い可能性を感じていた。たった一人で乗り込み、供給先を探し回ったこともある。

あのとき候補に挙げた工場は三つ。打ち合わせを重ね、最終的に二社まで絞ったものの、どちらに決めるべきか最後まで踏ん切りがつかなかった。

琴音は川島治に意見を求めた。川島治はコストを抑えて利益を確保することを優先し、より単価の安い一社を選んだ。拓越テクノロジーが今も取引している供給先、井峰である。

だが今回、琴音が訪ねてきた相手は井峰ではない。もう一社――品質を何より重んじる供給先、夢生だ。

当時、ある特殊な事情で夢生との提携は流れた。それはずっと、来栖琴音の胸に残り続ける...

ログインして続きを読む