第71章 恩知らず

川島治と伊藤心優はソファに腰を下ろし、来栖琴音が出てくるのを待っていた。

「心優、今日は……さっき言ってくれたこと、ありがとう」

伊藤心優は冷えた顔のまま言い捨てる。

「礼なんていらない。私は琴音のために言っただけ」

それきり、部屋は沈黙に包まれた。

来栖琴音は洗面所で顔を洗い、ゆっくりと出てくる。

「もう、噂が広がりすぎて……みんな知ってる。私は、役立たずの女で……夫ひとり守れないって……」

言い終える前に、悔しさが喉を塞ぎ、ぽろりと涙がこぼれた。

川島治は胸が痛むような目で彼女を見つめ、唇を動かす。だが言葉になる前に――。

けたたましい着信音が、静けさを真っ二つに切り裂...

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