第73章 泣いていい

野村さんが咄嗟に来栖琴音の身体を支えた。でなければ腰をぶつけたうえに、そのまま床へ倒れていたはずだ。

「琴音さん、大丈夫ですか」

来栖琴音は首を横に振り、足元を立て直すと、冷えた視線を川島治へ向けた。

川島治はやましいのか、伸ばしかけた手をさっと引っ込める。そこへ川島千晶が、待ってましたとばかりに言葉を重ねた。

「見たでしょ? この人、あなたのことなんてどうでもいいのよ。考えてるのは、あなたに金を出させて家を買って、自分と娘で名門の奥さま気取りの暮らしをすることだけ。あなたは稼ぐ道具なの」

来栖琴音が反論するより早く、川島千晶はさらに煽る。

「創業者? 会社は川島家のものよ。代表...

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