第84章 平手打ち

ちょうどそのとき、オフィスのドアが押し開けられ、川島の両親が入ってきた。

思いがけず大勢の人間がいるのを目にした二人は、状況が飲み込めないまま入口で足を止める。

野村さんが慌てて駆け寄り、二人を中へ案内した。

川島の母は怯えたように来栖琴音をちらりと見て、それから息子へ視線を戻す。

「治……これは、いったい……」

川島治は、誰もが褒めるいい夫であると同時に、親に優しい息子でもある。母の腕を支え、落ち着いた声で両親をなだめた。

「父さんも母さんも、座って」

言い終えると、今度は部下たちへ命じる。

「お前らは、もう下がれ」

「待って!」

来栖琴音はタダで引き下がる気などさらさ...

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