第95章 吐き気がする

向かいの部屋が、やけに騒がしい。

怒鳴り声。カメラのシャッター音――カシャ、カシャ。

先にカメラを構えた連中は、すでに部屋へなだれ込み、後ろから野次馬も次々と押し寄せていた。

来栖琴音は抵抗する間もなく、人波に押し流される。

中の光景は、外で聞いていた音から想像していたものより、ずっと生々しかった。

乱れた姿の男女が寄り添っている。

男は上半身裸で、背中や肩にいくつも引っかき傷が走っていた。見ただけで、何の痕か分かる。

女は男の背に隠れるようにうつむき、引き裂いたみたいなシーツで要所だけを必死に隠している。整った顔は血の気が引き、真っ白だった。

どれだけここで揉み合っていたのか。...

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