第96章 私の家に

来栖琴音は月乃を抱えたまましばらく走った。ドレスの裾が何度も足に絡み、転びそうになる。たまらず立ち止まると、月乃をいったん床へ下ろし、長いスカートの裾を――力任せに、びりびりと引き裂いた。

追いついてきた伊藤心優が息を切らしながら言う。

「琴音、いったい何があったの。上、どうなってるの?」

琴音は子どもの前で多くを語りたくなかった。涙を溜めた目で、縋るように頼む。

「お願い……私と月乃を、先にあなたの家に連れてって!」

騒ぎが表に出た以上、ホテルの外は記者だらけになる。月乃を撮らせるわけにはいかない。

「わかった。駐車場に行こう!」

琴音が非常階段の扉を押し開けた、その瞬間だっ...

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