第51章

佐藤レナの目が輝いた。彼女は恐る恐る東村紅の袖を引っ張った。

「お母さん、私も留学したい」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、壇上から司会者が一等賞の受賞者名を発表する声が響いた。

藤山静香だった。

藤山静香は危機的状況でも冷静さを失わず、事前に準備していなかった英語のジョークで会場の雰囲気を救った。普段の実力も推して知るべしだ。そもそも彼女のスピーチの実力は群を抜いていた。

会場から盛大な拍手が沸き起こる中、藤山静香は嬉しそうに立ち上がった。隣には彼女と似た顔立ちの中年男性が誇らしげな表情を浮かべていた。

佐藤レナの顔に失望の色が明らかに浮かんでいたが、心の...

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