第54章

一つの試験が免除されたことで、佐藤安奈の気分は受験が終わったかのように晴れやかだった。

「早坂兄さんに美味しいものを作れるわね」

古川教授に別れを告げると、佐藤安奈は元の教室に戻り、自分の荷物を持ち帰った後で先生に一言伝えるつもりだった。

教室に着くと、数人の学生が藤山静香を囲み、彼女が交換留学生として海外へ行く話を聞いていた。

貴重な枠を獲得できたのだから、藤山家も当然娘にこのチャンスを逃してほしくなかった。交換留学先はアイビーリーグの名門校だ。自費で留学してもアイビーリーグには入れないのだから。

つまり、親友同士はもうすぐ別れなければならない。

佐藤安奈が近づく...

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