第2章

 ノアの声が私を現実に引き戻した。

「何か大きなニュースでもあったのか?」

 心臓が早鐘のように打っている。私は急いでエコー写真を折りたたみ、手のひらにぎゅっと隠した。

「ノア、私……妊娠したの」

 私はどうにかその言葉を絞り出した。

 ノアの顔に瞬間、純粋な喜びがパッと広がった。

「セレスト、すごいじゃないか! これで俺たちも完璧な四人家族になるね!」

 彼は温かい笑みを浮かべて私に近づき、急かすように手を差し出した。

「エコー写真を見せておくれ。どこにあるんだい?」

 前世でその紙を渡したことが、私のあんなにも悲惨な死を招いたのだ。

「あ……下には持ってきてないの。印刷したものは、二階のバッグの中よ」

 私は嘘をつきながら、慎重に一歩後ずさりした。

 私の計画は単純だ。エコー写真を二階に隠し、彼が仕事に出た後、こっそり別の病院へ持って行って、一体何が問題だったのかを突き止めること。

 彼の返事を待たずに、私はきびすを返して二階へと駆け上がり、寝室に飛び込んでドレッサーの引き出しを開けた。

 引き出しの上に手を浮かせ、まさにその紙を入れようとした瞬間、私の肩越しに大きな手が伸びてきた。

 ノアが後を追ってきていたのだ。

 私が反応する間もなく、彼は折りたたまれた紙を私の手から直接ひったくった。

 全身から血の気が引いた。

 前世のあの恐ろしい光景――湿った地下室、鋭い痛みを伴うメス、私の身体から引きずり出された血まみれの肉塊――が、猛烈な勢いで脳裏にフラッシュバックした。

「やめて! 返して!」

 私は金切り声を上げた。咄嗟に後ろによろけた後、彼に向かって勢いよく飛びかかり、必死にその紙を奪い返そうとした。

 彼はあっさりと私をベッドに突き飛ばした。

 ノアはその紙を広げた。彼が印刷された内容を読み取るのを、私は見つめていた。

 ほんの数秒で、恐るべき変化が訪れた。

 元の穏やかな表情は完全に崩れ去った。顔面が蒼白になり、やがて陰湿で悪意に満ちた怒りが込み上げてきたのだ。

 その目は血走り、異常なほど凶暴に濁っていた。紙を握りしめる彼の手の甲には、今にも破裂しそうなほど青筋が浮き出ている。

「病院へ行くぞ」

 彼は低くしゃがれた声で、怒りに満ちた唸り声とともに咆哮した。

「この子供は堕ろさなければならない。今すぐだ」

 息が詰まるような絶望感が猛然と襲いかかり、私の胸を激しく圧迫した。

 たとえ生まれ変わったとしても、悪夢は再び同じ破滅の道へと滑り落ちていく。

 いやだ。

 二度と彼に、私を蹂躙させはしない。

 彼が猛然と飛びかかって私の髪を掴んだ瞬間、私は悲鳴を上げながら、全力で彼の股間を膝蹴りした。

 ノアは息を呑み、その手の力が次第に緩んでいく。

 私は躊躇することなく、爪で彼の顔を思い切り引っ掻き、その頬に深い血の跡を刻み込んだ。彼は悪態をつきながらよろよろと後ずさりした。

 私は脱兎の如く駆け出した。

 階段を駆け下り、玄関のドアを勢いよく開け放ち、裸足のまま眩しい太陽の光の中へと飛び出した。

「助けて!」

 私は悲鳴を上げながら、歩道を狂ったように走った。

「誰か助けて!」

 隣人のゲイボ夫人がちょうど郵便受けのそばにいた。彼女は驚いて呆然と立ち尽くしている。

 私は彼女にぶつかり、その腕をきつく掴んだ。

「警察を呼んで! 彼が私の子供を殺そうとしてるの!」

 重い足音が背後から響いてきた。ノアが玄関から勢いよく飛び出してきたのだ。頬は鮮血にまみれ、白いシャツの襟を赤く染めている。

 ゲイボ夫人の姿を目にした途端、彼はピタリと足を止めた。あの野獣のような怪物は消え失せ、礼儀正しいクロフォード医師が再び現れたのだ。

「セレスト、大丈夫、どうか落ち着いてくれ」

 ノアは穏やかに宥めるような口調で言った。

 彼は降参を示すように両手を挙げた。

「ゲイボ夫人、大変申し訳ありません。彼女は妊娠によるホルモンバランスの乱れで、ひどく興奮状態になっているんです」

「嘘よ!」

 私は彼女のがっしりとした身体の背後に隠れながら叫んだ。

「彼は私のエコー写真を見て、私を引きずり出して無理やり中絶させようとしたの!」

 ゲイボ夫人は私たちの間に割って入り、ポケットからスマートフォンを取り出した。

「クロフォード医師、動かないでください。強制的な中絶は重大犯罪です。これ以上一歩でも近づいたら、警察を呼びますよ」

 ノアは足を止めた。彼は、自宅のポーチに出てきた他の隣人たちをちらりと一瞥した。白昼堂々、私を引きずり去ることは不可能だと悟ったのだろう。

 そして、彼は笑った。それは冷酷で、計算高い冷笑だった。

「あなたの言う通りだ。彼女を刺激するべきではありませんね」

 彼は穏やかに言った。

 ズボンのポケットに手を伸ばし、自身のスマートフォンを取り出す。

 その生気を失った、サメのような目が私をじっと見据えていた。

「彼女には信頼できる人が必要なだけだと思います」

 隣人たちにも聞こえるほどの大きな声で、ノアは言った。

「彼女のお母さんに電話してみますよ。セレストがこういう時、アメリアならどう対応すべきかいつも知っていますからね」

 まるでみぞおちを殴られたように、肺の中の空気が一瞬で抜けていくのを感じた。

 ノアはスマートフォンを耳に当てた。その微動だにしない眼差しは、地獄の業火がまさに降り注がんとしていることを予感させていた。

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