第102章 一曲、いかがですか

加賀伊吹は林田柊を見つめた。目の前の、ロイヤルブルーのドレスをまとった少女に、すぐには返事をしない。

林田柊がどう出るか――それを待っていた。

だが林田柊は、彼を見もしなかった。ふいと顔をそらし、隣に立つ曾我京弥へ視線を向ける。

曾我京弥は眼鏡を指で押し上げ、一歩前へ。右手を差し出し、軽く腰を折る。社交の場で教科書どおりの、完璧な誘いの所作。

「林田社長、一曲、いかがですか」

曾我京弥がそう言うと、林田柊は手にしていたシャンパンのグラスを、通りかかった給仕のトレーへそっと置いた。そして迷いなく、差し出された掌に自分の手を預ける。

「いいわ」

二人は並んでダンスフロアへ向かう。加...

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