第106章 ただの義務

白鳥北斗は眠っていた。

林田柊はベッドの縁に腰を下ろし、子どもの規則正しい寝息を見守る。ふっと立ち上がると、背中にじんわり汗が滲んでいるのがわかった。さっき慌てて駆けつけたせいで、服が背に張りついて気持ち悪い。

子ども部屋を出て、顔でも洗って着替えよう――そう思ったとき。

廊下の奥から、ことり、と足音が近づいてきた。

家政婦の太田さんが、小さなトレーを両手で抱えて歩いてくる。上には滋養のあるスープが一椀。

太田さんは、主寝室の前に立つ林田柊を見つけると、ぴたりと足を止めた。表情が、どこか気まずそうに固まる。

「奥様……」

声はひどく低い。

林田柊が振り向く。

「旦那様が……...

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