第120章 後手を残した

林田柊は黒石をつまむと、迷いなく碁盤の右上隅へ置いた。

音は大きくない。けれど、乾いていて、やけに澄んでいた。

白鳥空弥はその一点を見て、眉がわずかに動く。間を置かず、白石を取り上げて追随した。

碁盤の上で黒と白が絡み合っていく。林田柊の打ち筋は安定していた。相馬祈みたいに場当たり的に打ち散らかすでもないし、木崎のおじさんのように序盤から全力で殴りかかるでもない。

黒石をひとつの塊にまとめ、守りに見せかけながら、どの手にも次の仕掛けが潜んでいる。

白鳥空弥は、常に盤面を支配する側の人間だ。白で黒を包み、逃げ道を断ち切る。手が速い。圧がある。

だが、林田柊はその圧に飲まれなかった。...

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