第39章 全部削除

自分はきっと胸が裂けるほど痛むのだと思っていた。いつもみたいに悔しくて涙がこぼれるか、怒りに任せて飛び出して問い詰めるか。

――でも、どれも違った。

今あるのは、強烈な生理的な吐き気だけ。胃の底からえぐられるような不快感で、気持ち悪さが限界までせり上がってくる。

白鳥空弥の顔を見ても、心は驚くほど凪いでいた。

林田柊、あんたは本当に馬鹿だ。

業界中の前で盗作だと暴かれた泥棒を、白鳥空弥は宝みたいに抱えている。

そんな自己中心で冷血な男のために、自分は仕事を捨てて、温度のない家で六年間――タダ同然の家政婦をやってきた?

救いようがない。馬鹿にもほどがある。

林田柊は、外へ出て問...

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