第46章 落水

林田柊は、水面で助けを求めるようにばたつく小さな手を見た瞬間、ほかのことを考える暇なんてなかった。

白いバスタオルを乱暴に引き剥がし、スリッパも履いたまま、深いほうへ身を投げる。

「――バシャン!」

湯しぶきが四方に跳ねた。温泉の湯はふつうのプールより重く、抵抗が強い。しかも熱めの湯の中で激しく動けば、胸が詰まりそうになる。

それでも、林田柊は構わなかった。

歯を食いしばり、沈んでいく小さな影へ必死に泳ぐ。

女の子はもう何度も水を飲んだらしく、顔は真っ赤で、もがく力すら尽きかけていた。

頭が完全に沈み切る、その寸前――。

林田柊が腕をつかんだ。

力を込めて体を持ち上げ、水面...

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