第52章 逃げられると思うな

厚手のカーテンの隙間から、朝の陽射しが鋭く部屋へ突き刺さる。

林田柊が目を開けると、キングサイズのベッドの向こう側はしわひとつなく整っていた。白鳥空弥は、もうどこへ行ったのかも分からない。

身体を起こす。昨夜――「何か」を混ぜられたミルクのせいで、彼女は夜の大半を耐えるだけで潰した。

熱だけが全身を駆け回るのに、歯を食いしばってやり過ごすしかない感覚。悪夢そのものだった。

着替えて階下へ降りる。階段の踊り場に差しかかったところで、屋敷の玄関扉が外から押し開けられた。

黒いジャージ姿の白鳥空弥が入ってくる。額にはびっしり汗。朝のランニング帰りなのが一目でわかった。

リビングでは白鳥...

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