第54章 下心がある

車内では、林田柊がいちばん左の席に座っていた。背筋はぴんと伸びたまま、上着の裾をきつく握りしめている。

ほとんど、ずっと動かない。

隣の男の気を引くような余計な物音なんて、ひとかけらだって立てたくなかった。

ただ自分を透明な人間だと思い込み、黙って顔をそむけ、流れていく街並みを窓の外に追いながら、無理やり頭を空っぽにする。それだけでよかった。

右側には白鳥空弥、その腕の中にもたれるように白鳥北斗。

父子はときおり小さな声で言葉を交わし、そこだけでひとつの世界をつくっていた。林田柊が入り込む余地など、最初からない。

柊は胸の内で冷たく笑った。

――本当に、慣れたものだ。

この六...

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