第60章 芝居をする

「おばあ様の前では余計なことは言うな。数日だけ「いい奥さん」を演じろ。この取引、お前が損することはない」

この男は、骨の髄まで身勝手だ。

会社の金で浮気相手を囲っている事実を隠すため。間近に迫った取締役会を乗り切るため。金で妻を雇い、芝居をさせる――そんな手まで思いつく。

金さえ積めば何でも買えると思っているのだろう。プライドも、従順さも。

以前の林田柊なら、屈辱で顔が焼けたはずだ。怒鳴り合って、「この六年を何だと思ってるの」と詰め寄ったはずだ。

「いいよ」

林田柊はふいに笑った。

「白鳥社長がそんなに気前よく出演料を出すなら、きっちりお仕事させてもらう。お金さえ払ってくれれば...

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