第74章 反転

周防正清が持ち込んだ玉露の香りがまだふわりと漂うなか、林田柊のスマホがぶるりと震えた。

曾我京弥からのメッセージ。

「柊、周防爺さんを連れて伊波爺様に少しご挨拶してくる。ついでにお二人を紹介しておく」

画面を見た瞬間、胸の奥の力がすっと抜ける。

さっきまでずっと考えていた。曾我教授が周防爺さんみたいな重鎮をわざわざ呼ぶなんて、借りが大きすぎる、と。

でも、こう言われると妙に落ち着いた。

曾我教授は、相手を困らせるようなやり方はしない。

ちょうどそのとき、叔母が果物の盛り合わせを手に寄ってきた。声を落としているのに、弾む気配が隠しきれない。

「柊、見て。木下教授たち、来たわよ!...

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