第82章 スキー

林田柊はローテーブルの上に置かれたキーホルダーへ、ちらりと視線を落とした。

作りはたしかに精巧だ。けれど、手は伸ばさない。

「いりません」

芳賀樹も無理強いはしなかった。肩をすくめ、キーホルダーをポケットへ戻すと、踵を返してバーカウンターのほうへ水を取りに行く。

その微妙な空気に、加賀昭子だけがまるで気づいていない。彼女は両手で林田柊の腕を掴んだまま、ぶんぶん揺さぶった。

「義姉さん、着替えよ! 初級コース行こ! 私が案内する!」

揺さぶられて抵抗する気も失せ、林田柊は加賀伊吹を一度見た。

加賀伊吹は「好きにしろ」とでも言うように手をひらりと振り、自分は立ち上がって道具を持ち、...

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