第83章 百二十億

林田柊がスキー場を出て、高速に乗った途端、スマホが鳴った。

小寺清からの着信だ。

「柊、いまどこ? 悪いんだけど迎えに来てくれない? 車、あのクズ元カレに擦られてさ。修理に出しちゃって」

声には露骨な苛立ちが混じっている。

「どこにいるの?」

「蓮花の苑。東区にできたばっかの高級物件。友だちに頼まれて間取り見に来たんだけど、途中であのバカが『やり直そう』とか短信送ってきてさ。もう気分最悪。帰りたいのに車ない」

蓮花の苑。

林田柊も噂は聞いたことがある。去年の用地取得の時点で何度もニュースになった、街でいちばん上だと騒がれた純戸建てエリア。坪単価はとんでもなく、いちばん小さい区画...

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