第85章 どうでもいい人

別れ際、丹羽一安と古賀伊介はそろって林田柊に賛辞を送った。

丹羽一安は去り際に彼女の手をぎゅっと握り、「林田、今後なにか手が必要になったら、京弥に伝言させればいい」と言う。

古賀伊介も笑いながら名刺を差し出した。

「若いのにようやる。先は明るいぞ」

林田柊は恭しく受け取り、二人の年長者が車に乗り込むのを見送った。

車が屋敷の門を抜けると、石畳の小径に曾我京弥が立ち、珍しく煙草に火をつけた。

普段は吸わない男だ。

林田柊は隣で黙って待つ。彼が口を開くのを。

曾我京弥は煙を吐き、どこか含みのある声で言った。

「丹羽一安の息子が誰か、知ってるか?」

林田柊は首を横に振る。

「...

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