第89章 吐き気

傍らに控えていた専属医が一歩進み、綿棒で林田柊の手の甲の穿刺部を押さえた。

「白鳥社長、奥さまは目を覚まされれば大事にはなりません。ただ……奥さまは長期にわたる精神的な負荷が積み重なり、いわゆる心因性の不調が身体症状として出ています。そこへ過労が重なって、急性の高熱を起こした形です。今後は感情の起伏を避け、刺激を受けないように」

林田柊はベッドヘッドにもたれたまま、何も言わない。

積もり積もって、病になる。

長期の圧迫。

林田柊は冷えた目で白鳥空弥を見据えた。

自分の抱えた行き詰まりも、身体の不調も――すべて、目の前の男が招いたものだ。

彼はいつだって、誰かを庇い、誰かを甘やか...

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