第93章 何もない

林田柊の車が山道を抜けたところで、黒いSUVが二台、側道からぬっと躍り出た。挟み込むように前へ回り込み、路肩へ追い込む。

白鳥本家の用心棒がドアを開ける。

「奥様。おばあ様が――夕食を最後まで召し上がってからお戻りになれと」

林田柊は無言でハンドルを切り返し、来た道を戻した。

――見せてもらおうじゃない。このババアが、まだどんな芝居を打つつもりなのか。

本家のダイニング。

主座の右手に白鳥空弥が座っていた。ネクタイは一段ほど緩められ、顔は不機嫌そのもの。

主座にはおばあ様。

林田柊が入ってきても、挨拶はない。椅子を引き、どさりと腰を下ろす。

おばあ様が箸を卓に叩きつけた。ぱ...

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