第236章 何故私の物を相沢湘子に渡すのか

篠崎千謙はわずかに眉を顰め、隣の補佐役に目をやった。

檸檬は首を傾げる。

「誰か、あなたを呼んでいるような気がしませんか?」

「聞き間違いだ」

千謙は身を翻して彼女の視界を遮った。その向こうでは、望月詩織が数人のボディガードに取り囲まれ、そのまま連れ去られていくところだった。

すぐに、ヘリコプターが離陸し、飛び去っていく。

詩織は、千謙があの少女を連れて去っていくのを、ただなすすべもなく見送るしかなかった。悔しさで泣き出しそうになる。

先ほど、彼があの少女に優しく接しているのを見てしまったのだ。

詩織は、千謙のあんなに優しい一面を一度も見たことがなかった。心の底から湧き上がる嫉妬...

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