第279章 今回は本当に湘子を見くびった

檸檬が振り返って戸口に目をやると、その瞳孔がキュッと縮まった。

霧人兄さん——高坂霧人が、まさか帰ってきていたなんて。

彼女の記憶では、前世の霧人兄さんはずっと西都兄さんの研究室にいて、西都兄さんの代わりに製薬会社の業務を処理していたはずだ。

湘子は車椅子に乗ったその男を見るや否や、ぱっと顔を輝かせ、駆け寄ってその胸に飛び込んだ。

「霧人兄さん、やっと帰ってきたんですね」

「ああ、もう帰ってきた。これでもう誰も君をいじめたりはできないさ」

霧人は湘子を抱きしめ、その眼差しはひどく優しい。

湘子は甘えた声を出した。

「霧人兄さん、もう私にはあなたしかいません」

霧人はしばらく湘子を...

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